名作鬱漫画『おやすみプンプン』あらすじと3つの魅力【無料で読める哲学】

おやすみプンプン

ネット上で“名作鬱漫画”と名高い『おやすみプンプン』。主人公プンプンのどことなく愛嬌のある姿とは裏腹に、作中では死、犯罪、浮気、怪しげな宗教、いじめ、トラウマなど、ダークな要素がひしめいている。

そういった暗い出来事が目を惹く同作ではあるが、プンプンをはじめとした登場人物たちがその鬱展開によって傷つき、悩み、自分なりの答えを見出していく様は、また別の意味で読者の心に響くものがある。

登場人物たちの年齢や状況は様々だが、その胸の内にある闇の核は青春の悩みと言って相違無い。

今回はそんな名作”青春”鬱漫画を紹介したい。

鬱漫画『おやすみプンプン』あらすじ

●主な登場人物/プンプン(小学5年生。どこにでもありそうな或る街に住んでいる、どこにでもいそうな或る少年)、田中愛子(練馬から転校してきた女の子)、雄一おじさん(大船に住んでいたが、事情によりプンプンと暮らすことになる)

●あらすじ/ある日のこと、プンプンはクラスにやってきた転校生・田中愛子に一目惚れ。彼女から「もうすぐ地球は人の住めない星になる」「別の星に移住しないと人類はメツボーしてしまう」という話を聞いたプンプンは、今日出された「将来の夢」の作文に、「宇宙を研究する人になりたい」と書こうと思い立つ。だが翌朝、プンプンが起きると家の中が大変なことに…?

小学館eコミックストアより

冒頭部分は小学館のサイトから立ち読み可能なのでもう少しネタバレする。父親に望遠鏡を貰ったプンプンが、将来は宇宙を研究する人になるという素敵な夢を抱いたハートフルな展開の翌日、そのプンプンパパのDVと思われる事件により母親が重傷を負ってしまう。そこからは父親の逮捕、離婚、と怒涛の展開が続いていく。

その後も鬱展開が続くものの、一方でプンプンが抱えている悩みそのものは多くの一般的な青春の葛藤と差異がない。ただ巻き起こる衝撃的な事件の数々と、プンプンをはじめとした登場人物たちの繊細さがその葛藤をこれでもかと言うほどに強調しているのである。

ダークな展開の連続と、それに向き合う登場人物たちの姿から目が離せなくなることだろう。

『おやすみプンプン』の魅力3点

1人の人間が描いているとは思えないほどの哲学の応酬

衝撃的な展開や主人公を鳥のような妙なフォルムで描いている点にばかり目を奪われてしまいがちだが、『おやすみプンプン』の最大の特徴は、過剰なまでの哲学の応酬である。

同作には小学生から中年まで様々なキャラクターが登場する。その多様な人物たちが、とにかく自分の人生哲学を語りまくるのだ。話の都合上そういった場面だけを抜き出して描いているのだろうが、正直不自然なほどにそれぞれ自分の思想を明確に言語化して語ってくる

そしてこの作品の最も優れている点は、その哲学の多様さにある。本当に1人の人間が描いているのかと驚くほどに、1人1人のキャラクターの価値観が違うのである。それぞれの生育環境や体験した出来事に合わせ、見事に描き切っているのだ。

1人の人間の中に無数の哲学が存在しているのは自然なことではあるが、それをとことん拾い上げ、正確に描き切った作者の浅尾いにおの才能には脱帽である。

展開や伏線といった話そのものの面白さ

同作の2つ目の魅力は、話そのものの面白さである。

『おやすみプンプン』は、作中で数年の時が流れる。それにも拘わらず特に間延びする部分もなく、怒涛の展開が読者の興味を惹きつけてやまない。

また、作中の時間で数年後に回収される伏線も多々あり、細かい部分まで作り込まれていることに驚かされる。

純文学のような美しい文章

この作品の優れた点の3つ目は、文章が美しいことだ。

同作では登場人物たちがひたすらに自身の哲学を語る場面が多いため、必然的にセリフの量が多くなってしまっている。

だが美しい文章がそれを苦痛に感じさせない。その美しさはまるで純文学でも読んでいるかのように錯覚してしまうほどだ。故に長いセリフも読みごたえがあるのだ。

あえて1つ難癖をつけるなら、多種多様なはずのキャラクターたちのセリフのほとんどが綺麗な文章で書かれているため、リアリティが薄れてしまっている点を挙げる。しかしそれも作品の世界観と相俟って、さほど気になるものでもない。

『おやすみプンプン』を読む際の注意点

トラウマを抱えていたり多感な人にとっては鬱マンガになり得る

ここまで『おやすみプンプン』の良いところを紹介してきたが、同作を読む際には注意すべき点があるのも事実だ。

その1つ目は、やはり鬱漫画と言われるだけの理由がある点だ。

同作の登場人物たちは、一般的に心に深い傷を負うような出来事を数多く体験する。そしてそれらは妙な現実味を帯びているのだ。

そのため多感な人や、作中の人物たちと同様のトラウマを抱えている人にとっては、非常に暗い気分にさせられる鬱漫画となってしまうかもしれない

しかし自分やトラウマを客観的に眺められるようになっている人にとっては、同作は自らをさらに見つめ直す機会を提供してくれる教科書になり得る。

ところどころ適当に読み飛ばしてOK

2つ目の注意点はこれまで書いた内容と少し矛盾するが、文章や描写があまりにクドイことだ。

例えば同作ではモラトリアム期特有の心境を非常に上手く描いているのだが、そういった青春の苦悩からすでに脱却している人にとっては、何も心に響いてこない陳腐なセリフの連続にしか感じられないかもしれない。

そのため苦痛な部分については馬鹿正直に一字一句読む必要はないだろう。

なぜなら、実はこの作品には話の大筋とは全く関係のないキャラクターや場面が多数存在するからだ。(しかし、そこを無駄だと思わせないところがこの作品の優れた点でもある)

無料でも読める

これだけ魅力のある『おやすみプンプン』だが、2020年12月現在、「マンガワン」で全て無料で読むことができる

もし興味を持っていただけたなら、是非一読してみて欲しい。