2013年に発行され大ヒットを記録した嫌われる勇気(ダイヤモンド社)。
同書は「心理学の3大巨頭」の1人に数えられるアドラーの思想をわかりやすくまとめた本になります。究極の自己啓発であるアドラー心理学は「すべての悩みは対人関係の悩みである」という主張のもと「目的論」の立場をとっているのが特徴です。
対人関係と生きづらさとの関連。そして目的論とは?
生きづらさを抱える人々に向けて書かれた同書の内容を紹介していきます。
『嫌われる勇気』の内容
『嫌われる勇気』はアドラー心理学に精通した哲人と悩める青年の対話形式の物語です。青年の悩みに哲人が答え、それに対し青年が反論、さらに哲人が回答するという流れを繰り返す非常に読みやすい構成になっています。
以下、同書の内容の要約です。
トラウマは存在しない

『嫌われる勇気』の第1章はトラウマについての話です。PTSDのような重度のものでなくても、心に傷を負った人は過去に悩まされ続けることでしょう。ところがアドラー心理学は「トラウマは存在しない」という立場をとっています。
現実に多くの人が過去の出来事に対する悩みを抱えているにも関わらず、そのトラウマが存在しないとはどういうことでしょうか?
ここで登場するのが「目的論」。
端的に説明すると、目的論とは「特定の目的を達成するため無意識のうちに過去の経験に意味付けすること」です。
例えば「私が他人と仲良くできないのは過去にいじめにあった経験(トラウマ)があるからだ」と主張する人がいた場合、アドラー心理学では「実は他人と接したくないという目的が先にあり、いじめのトラウマはその目的を達成するために後から意味付けしたに過ぎない」と考えます。どんな過去があったにせよ、現状を選択しているのは自分自身であり、他人と仲良くするより1人でいる方が比較的心地良いからそうしていると捉えるのです。
無論トラウマが脳に物理的なダメージを及ぼすのは事実であり、アドラー心理学においても過去の出来事による人格形成への影響は否定していません。一方で、過去の経験はそれを思い返すときの状態(健康や社会的に成功しているかどうかなど)によって良いものにも苦いものにも変化するという研究結果も存在するため、目的論の考え方も一理あると言えるでしょう。
すべての悩みは「対人関係の悩み」

『嫌われる勇気』の第2章は、「すべての悩みは対人関係の悩み」というのがテーマです。
アドラー心理学では対人関係の悩みの克服のために下記の具体的な目標が設定されています。
・自立
・社会との調和
・自分には能力があるという意識を持つ
・他人は仲間であるという意識を持つ
これらの目的を達成するためには直面せざるを得ない問題があります。それが「人生のタスク」と呼ばれるものです。
人生のタスクはさらに
・仕事のタスク
・交友のタスク
・愛のタスク
の3つに細分化されます。
この章の内容は対人関係の悩みを抱える現代人にとって実用的な助けとなることでしょう。
他者の課題を切り捨てる

『嫌われる勇気』第3章では人間関係から自由になるための考え方について解説しています。この章でのポイントは「承認欲求」と「課題の分離」です。
課題の分離は、ある選択や事柄が「自分の課題」なのか「他人の課題」なのかを考えることを意味します。
誰の課題かを見分ける方法はシンプルです。「その選択によってもたらされる結末を最終的に引き受けるのは誰か?」を考えてください。
『嫌われる勇気』ダイヤモンド社 岸見一郎 古賀史健著
重要なのは、他者の課題は切り捨てることです。これは他人に無関心を貫くわけではなく、他者の課題に干渉せず黙って見守ることを指します。
対人関係の悩みは他者から認められたいという承認欲求や、他人になにかを強要したり勝手な期待を掛けたために発生することがほとんどです。
自他の区別をしっかりすることで対人関係から自由になるきっかけを掴めるでしょう。
『嫌われる勇気』は人間関係の悩みを克服するために役立つ本
『嫌われる勇気』の内容を簡単に紹介しました。同書には上で述べた部分以外にも対人関係の悩みを解決するのに役立つ考え方が多く載っています。
他者との関りが重要となる現代社会において、対人関係のストレスは切り離せません。
『嫌われる勇気』は現代人にとって必読の本と言えるでしょう。
『嫌われる勇気』はkindle版でも読める
『嫌われる勇気』はkindleでも読むことができます。
手軽に読みたい方におすすめです。