ヘルマン・ヘッセ『クヌルプ』【あらすじと名言解説】自由な人生の果てにあったもの

ヘルマン・ヘッセ『クヌルプ』あらすじと内容解説 

ヘルマン・ヘッセの『クヌルプ』は、1908年から1914年にかけて発表された3部構成の作品です。3部がまとめられて1つの本として出版された当時、ドイツは第一次世界大戦の真っただ中でした。

参考記事:ヘルマン・ヘッセの生涯

そんな混沌とした世の中とは相反して『クヌルプ』は、自由に生きる旅人クヌルプの生涯を描いたストーリーとなっています。

誰もが羨むような自由を謳歌する男クヌルプ。その人生の果てに辿り着いた答えは必見です。

『クヌルプ』のあらすじと3つの名言を踏まえた解説をしていきます。

ヘルマン・ヘッセ『クヌルプ』あらすじ

年上の娘への初恋が裏切られた時から、クヌルプの漂泊の人生が始まる。

旅職人となった彼は、まともな親方にはならなかったが、自然と人生の美しさを見いだす生活の芸術家となり、行く先々で人々の息苦しい生活に一脈の明るさとくつろぎをもたらす。

『クヌルプ』新潮文庫 ヘルマン・ヘッセ著 高橋健二訳 裏表紙より

第1部で描かれているのは旅人クヌルプの自由な暮らしぶり。

家も職も持たないクヌルプは気分の赴くままに旅をしながら生活しています。

彼は独力で生きることを好み、野宿を厭いませんが、時には各地の知人の家に厄介になる日もあります。彼には不思議と人に好かれる才能があり、知人たちはクヌルプの世話を焼くことをむしろ名誉なことと考えています。

どこに行っても可愛がられる猫のように気まぐれで自由な暮らしを謳歌するクヌルプ。人々はそんな彼の生き方やいつまでも世間に染まらない純粋さに憧れを抱いています。

その一方で、定職につかないのが不思議なほど多才で利口なクヌルプは、その根無し草な生き方に苦言を呈される場合もしばしばです。普段陽気で穏やかなクヌルプですが、内心の嫉妬からくるそうしたおせっかいな助言に対しては真剣に反論します。

それは彼の中に自由に対する葛藤があるために他なりません。

自由気ままな人生の果てにクヌルプが辿り着いた答えに注目です。

『クヌルプ』3つの名言と解説(※ネタバレ注意)

自由な旅人クヌルプの人生を物語る3つの名言を紹介します。

“皮なめしなんか、ぼくにはどうでもいい。りっぱな仕事だろうけれどね。ぼくは働く才能を持たないんだ。(P11)”

各地を旅するうちに様々なことを学んだクヌルプには、皮なめし匠としての知識や才能があります(なめしは皮を製品に使える革にするための工程)。

それはもし真面目に取り組んでいたなら今頃は親方になってそれなりの暮らしができただろうと言われるほどでした。

ですがクヌルプはそうした助言をきっぱりと撥ね除けます

定職に就くことは生きるうえで賢い手段の1つですが、クヌルプには世間で良しとされる暮らしが合わないのです。

“だから、どこかで夜、花火があげられるときほど美しいものを、ぼくは知らない。(P61)”

クヌルプは花火のような一瞬の煌きを持つものこそが美しいと感じています。

それは人間関係においても同様です。

彼は永遠を信じていません。だからこそどんな人々や物事とも繋がらない生き方を選択し、それを美しいと感じているのです。

“自由と美しさに事欠くことはなかったが、終始ひとりぼっちだった。(P97)”

クヌルプのような自由な生き方には誰もが憧れることでしょう。

彼はお金や仕事や人間関係に縛られることは一切ありません。

ですがそうした生き方にはまた別の障害があるようです

それは孤独と疎外感です。

何にも縛られないということは、同時に何とも繋がっていないことを意味します。

家庭と定職を持つ人とクヌルプとでは互いの価値観が違いすぎるため、真の意味での理解や共感に至りません。そのため深い人間関係を築くことが難しいのです。それはクヌルプに恋心を抱いた女性たちとでさえ同様です。

クヌルプの生き方を形作ったものと人生の答えとは

ヘッセ『クヌルプ』内容と解説

『クヌルプ』は主人公クヌルプの少年期から晩年までが描かれています。

彼が自由を愛するアウトサイダーとして生きるに至った経緯その果てに辿り着いた人生の答えは読む人の心に一石を投じることでしょう。

特に孤独や疎外感を抱いている人におすすめの1冊です。