自身や身近な人が短気な場合、なにかとストレスが溜まってしまうものです。
「なんで自分はこんなに怒りっぽいんだろう」
「あの人はちょっとしたことで怒るから接しづらい」
こんな悩みを抱えている方は多いことでしょう。
他人から見ると、短気な人が怒るポイントは実に不可解です。理由がわからないのでなおさら気を使ったり悩んだりしてしまいます。
短気な人はなぜそんなにも怒りっぽいのでしょうか。
それには幼少期の体験が影響しているのかもしれません。
短気な人が怒る原因について解説していきます。
人が怒るのは危険に遭遇しているとき

人が怒るのは脳が危険に遭遇していると判断したときです。それは物理的な危険ばかりではなく、心が傷つくことに対しても同様。
『身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法』(紀伊國屋書店)によると、人が危険に遭遇したときには、脳が自動的にアドレナリンなどのストレスホルモンを放出するそうです。
ストレスホルモンが放出されると、身体は「闘争/逃走」と呼ばれる状態になります。これは文字通り「闘う」or「逃げる」ことを意味しています。ストレスホルモンが放出されたとき、人は極度の興奮状態に陥るのです。
しかしこの反応は普段から誰にでも起こっている本能的な反射に過ぎません。
では短気な人とそれ以外の人では何が違うのでしょうか。
短気の原因は過去のトラウマ

短気の原因の1つとしてトラウマによる影響が考えられます。
トラウマは本人にとって生命や存在を脅かされるほどの苦痛を伴った過去の体験です。トラウマを負った事実は、脳がその出来事を生存を脅かす危険であると学習したことを意味します。物理的な命の危機以外にも、幼少期の親からの暴言や失恋の痛手なども含まれるのがポイントです。
生命の危機を警告するものなので、トラウマを連想させるような出来事に遭遇した際は、脳が危険と判断し、身体を上述の「闘争/逃走」状態にします。
トラウマはあくまでその人にとっての危険に過ぎません。そのため人によってスイッチが入るポイントが異なります。これは短気な人の「いつキレるかわからない」という特徴と一致するのではないでしょうか。
また同書によると、トラウマを負っている人ではストレスホルモンの分泌に以下のような違いが生じるようです。
・些細なことにもすぐに反応してしまう
・反応が長期化しやすい
この違いが生じる理由は、心の傷が過敏さやホルモンの分泌にまで影響を及ぼすためです。
短気な性格について考える場合、こうしたことを念頭に置いておくのがいいでしょう。
短気の原因は幼少期の体験による愛着障害

短気のもう1つの原因として考えられるのが愛着障害。
関連記事:愛着障害とは?
愛着障害は、幼少期に親や周りの人々などとの関係がうまく構築できなかったことによる愛情欠乏が原因の障害です。愛着障害にも短気と言われ得る特徴が見られます。
愛着障害はその生育環境により複数のタイプに分類されますが、そのなかでも、
「不安型」
「恐れ・回避型」
と呼ばれる2つは短気との関連が深いと考えられます。
このタイプは「愛されたい」「認められたい」といった気持ちが強く、それゆえに拒絶されたり見捨てられたりすることに非常に敏感です。
また、基本的に他人は自分を傷つけるものだと見なしている傾向があり、被害妄想的な認知に陥りやすいと言えます。
そのため相手のちょっとした言動に不安を抱き、激しい感情をぶつけることが度々あるため、短気と捉えられても不思議ではありません。
この2つのタイプは、感情を激しく表現しなければ愛情を得られない環境で育ったため、そうしたスタイルが定着していると考えられます。
関連記事:愛着スタイルとは
HSPやいじめ、虐待も短気の原因に
近年登場した概念であるHSP(非常に繊細な人)も短気の原因になり得るかもしれません。
関連記事:HSPとは
内向的なイメージが先行するHSPですが、その在り方は多様であるとされています。
感受性が強く、他人の気持ちを推し量るのが得意なHSPだからこそ、些細なことで負の感情を覚えても不思議ではありません。もし敏感な気質と同時に、傷つけられたら不快感を露わにするという行動パターンを有していた場合、やはり短気に見えるのではないでしょうか。
またいじめや虐待によって過敏になるという研究結果があります。
こちらに関しては上述のトラウマや愛着障害に繋がることもあり、短気との連関も想像に難くないでしょう。
関連記事:HSPといじめや虐待
短気な人は理性とは関係なく脳が危険に対し反応している
こうして見ていくと、短気な人の怒りは意図的なものと言うより、脳が危険に対し反射的に措置を講じていると考えることができます。
短気な人は傷ついている。
これを理解していれば、自分や他人に寛容になれるかもしれません。
参考文献: